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コラム

緊張とのつきあい方

今年はワールドカップやアジア大会等、様々なスポーツイベントで日本人選手が活躍する姿を目にします。素晴らしいパフォーマンスをした選手が、試合後インタビュアーに、緊張していたと話している姿を見かけると、「緊張していたなんて、全く見えなかった」と驚かされます。

意外な話かもしれませんが、緊張状態を作り出すことで、人間のからだは、自分を守ったり、持っている力を引き出そうとしています。ただ、“緊張”をネガティブなものとしてとらえがちなのは、緊張しすぎて本来の力を発揮できなかった経験の方が多いからかもしれません。

緊張しすぎてうまく力を発揮できなかった時のことを振り返ると、本番前に、「自分はうまくやれるだろうか」「たいしたことないと誰にも思われたくない」などと、不安な気持ちになっていたことが多いように思います。となると、緊張しても本番で力を発揮するためには、まず不安な気持ちにならない工夫が必要ということになります。例えば、本番までに、①自分が緊張する場面やパターンを知っておく、②綿密に計画を立てる、③リハーサルをしておく、といった“事前の準備”ができていると、ある程度見通しが立ちやすくなったり、やれそうだと自信を持って本番に臨める確率が高くなります。

とは言っても、毎回万全の準備ができるわけではありませんし、準備をしていても、練習とは違う本番の空気に緊張感が高まってしまうことも多いです。

このような時には、自分に合った“緊張緩和法”があると、いい意味で本番中に力が抜けやすくなります。例えば、深呼吸やストレッチ、筋弛緩法(耳につくくらい肩をぐっと上げて、10秒後、ふっと力を抜いて下ろす、など)はちょっとした時間で取り組める緊張緩和法です。

緊張緩和法を行うときに大切なのは、緊張を抑え込もうとしたり無理に和らげようとしないことです。緊張のサインに気付いたら、まず「体が自分を守ろうとしてくれているんだな」とポジティブにとらえてみましょう。そして、その後、緊張緩和法に取り組んでみてください。“やっているうちに緊張が和らいでいた”と思えるような取り組み方がベストです。

事前の準備と緊張緩和法を活用して、緊張しても自分のパフォーマンスが発揮できるように工夫してみましょう。

 

(御池メンタルサポートセンター 臨床発達心理士 金谷 尚佳)