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コラム

睡眠のすゝめ

春眠暁を覚えず。とは言え、忙しい日常ではなかなか朝寝坊することは難しいかもしれませんね。OECD(経済開発機構)の2018年の発表によると、日本人(15歳〜64歳)の平均睡眠時間は7時間22分で、33加盟国中ワーストであり、日本でこの調査が行われたのは2016年のことなので、現在ではさらに短くなっているのではないかとも言われています。実際、皆さんの中にも「7時間も寝ていないよ」と言う方も多いのではないかと思います。

十分な睡眠をとることは、疲労回復や長期的な疾病予防など、心身の健康を維持する上で重要であることは理解していても、睡眠時間の確保がおろそかになりがちなのは何故なのでしょうか。

私たちカウンセラーは、こころの健康状態といった目に見えないものを推し量る上で、睡眠の状態を確認することがあるのですが、面談をしていると、「早く寝た方が良いのはわかっているのだけれど、布団の中でつい携帯電話で遊んでしまう」、「そろそろ布団に行かないと、とは思うのだけれど、なんとなくテレビを観ながらボーっとしてしまう」といった声をよく聞きます。一見、無駄とも思える時間ですが、実はこの時間がしっかり睡眠をとる上で重要な意味を持っているのかも知れません。

眠るためには<戦闘モード(交感神経優位)>から<リラックスモード(副交感神経優位)>への切り替えが必要です。慌ただしい日常を過ごした後で、携帯電話で遊ぶことやボーっとテレビを観ることが、リラックス状態への切り替えに一役買っているのです。とは言え、液晶などの光の刺激は、睡眠の妨げになるのではないかとも言われています。そこで、眠りにつくためには、寝室の照明を暗めにしたり、気分が落ち着く音楽を聴いたり、ハーブティーやホットミルクを飲んでみたりといった、短時間でできそうな自分に合った、戦闘モードからリラックスモードへの適切な切り替え方法を把握しておくことがカギとなるでしょう。

子どもの頃、遠足の前の晩はワクワクして寝付けなかった、受験前日の晩は緊張して寝付けなかったといった経験はないでしょうか。睡眠はこころの影響を受けやすいものです。「早く眠らないと」と焦ることは禁物です。“睡眠は追いかけると逃げる”とも言われています。「今日は寝不足でもその分、明日はよく眠れる」くらいの気持ちでいきましょう。

ぐっすり眠れることに健康へのマイナス面はありません。ご自身の睡眠について見直してみませんか。

                                                     (京都工場保健会 臨床心理士 岩佐 浩)