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コラム

未曽有の事態の今こそ知ってほしい「曖昧さ耐性」

世の中には、大きなことから小さなことまで、どうにも答えの出ない、対処のしようのない事態や物事というものがあります。突然ですが、皆さんはそんな時、「白黒はっきりつけたい」タイプですか?「そんなにはっきりしなくても、グレーはグレーでいいんじゃない?」タイプでしょうか。

心理学の世界では、そうした曖昧さに対する捉え方の個人差を「曖昧さ耐性」という概念で表します。分かりやすく言うと、曖昧さに耐えられるかどうか。曖昧さ耐性が低いということは、物事の白黒ははっきりさせたいタイプです。一方、曖昧さ耐性が高いということは、物事のグレーゾーンや、もやっとしたことをそのままにしておけるタイプを指します。

曖昧さ耐性に関するこれまでの研究では、おおよそ一貫して「曖昧さ耐性の低い人は精神的健康度も低い」という結果が得られています。普段は特に意識することもないようなことですが、考えてみるとそうかもしれませんね。私たちの世界は曖昧なことや不確実なことがあまりにも多く、それらが完全になくなるということはありません。結局、それらと上手く付き合っていくしかないのですよね。

研究によると、曖昧さ耐性の高い人は「上手く割り切って次の目標へ移行していく」という特徴があり、それにより精神的健康度も高いそうです。曖昧なことやどうしようもないことについては、それはそれとして置いておきながら、いま具体的に出来ることに焦点を当てて取り組んでいく…といったところでしょうか。まずは、もやもやを躍起になって排除しようとしたり、ないものとして無視したりするのではなく、もやもやがあるなあ…とそのままじっと心の中に留めてぼんやり眺め、共存してみることが第一歩になりそうです。

今年は新型コロナウイルスが世界的に猛威をふるい、いまだ特効薬やワクチンは開発中です(2020年6月執筆現在)。数年先の未来はおろか、私たちの今の生活も、この先どうなっていくのか誰にも分かりません。現状こそ、まさに私たちの曖昧さ耐性が試されるときではないでしょうか。そんな概念があるのだな、とこのコラムでお知りおきいただくことで、皆さんの精神的健康に少しでも寄与できますと幸いです。

(御池メンタルサポートセンター 臨床心理士 藤井 彩)