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コラム

ストレスは良いもの? 悪いもの?

「ストレス」という言葉を聞いたら、どのようなことを思われるでしょうか。一般的には、「迫ってくる納期」「イライラすること」など、「ストレス=こころの負担になるもの」とのイメージが多いものです。

最初にストレスを定義したのはカナダ人のハンス・セリエという生理学者です。セリエは、外部から生体に加わるような緊張(暑熱・寒冷、あるいは怒りなどの精神的緊張など)を受けたとき、これらの刺激に適応しようとして生体に一定の反応が起こることを発見しました。ストレスの元々の意味は「圧力」であり、良いも悪いもありません。何らかの刺激(ストレッサー)によって生体に生じた歪みをストレス状態といいます。

外から加わった歪みという点では、「出世する」など一般的には喜ばしい状況もストレス状態です。歪みを元に戻そうとするためにエネルギーを用いる状況を示しています。

これを「こころ」という観点から考えてみると、ストレスが加わる、それを乗り越えることで鍛えられていきます。例えば、職場に細かなことを指摘する上司がいる。提案書を提出すると足らない部分の指摘を受ける。それが毎回続くので、会社に行くのも嫌になるぐらいだった。新しい上司になり、提案書を提出すると、「こんなに細やかに作成してくれて、ありがとう。これは素晴らしいよ」とほめられた。以前の上司が口うるさく指導してくれたのが、今に活きている。

つまり、ストレスが与えられ、それを受け止めて応えてきた、だから出来るようになったと考えることができます。ストレスが全く無い状態であると「こころ」は鍛えられません。

では、何が問題なのでしょうか。それはストレスが自分の限界を超えてしまうことです。人によって得意なことに違いがあり、鍛えるといっても、ストレスのかかり方に違いが出てきます。大切なのは自分の限界を知ることです。

最近の研究では、「ストレスは役に立つものであり、なるべく受け入れ、うまく付き合っていく必要があるもの」との考え方を持っていると、「ストレスは健康に悪い」と思っている人に比べて、うつ状態になりにくく、人生に対する満足度も高いという実験結果が出ています。

自分の現状を違った視点で見ることができれば、対処法が見つかるかもしれません。そして、それ以上に自分の限界を知ってください。「役に立つなんて考えられない」と思うときには、自分の限界に達している可能性があります。そんなときは、信頼できる誰かに相談してください。誰かに頼ることも大切なストレス対処です。

(御池メンタルサポートセンター 臨床心理士 山根 英之)